EDH初級者向け解説 part 1/3
2021年3月9日 Magic: The Gatheringガチ。Competitive。競技的。どういう言い方でも良いが、要は最適化して勝率を追求するということ。
昨今のEDH人気の高まりに乗り遅れてはいるが、初級者向けの解説というのは意外にも少ない。厳密にいえばデッキを作ったことが無い初心者向けというものはあるが、これからガチEDHを始めたいと思う人向けの解説が不十分。そこで重い腰を上げてついに書き上げた。
まず前提として、①4人対戦②勝利を目指す、というものを挙げる。カジュアルに楽しむのもEDHの面白さではあるが、一定の目標がないと「好きなカードを使ってください」で終わってしまうので解説の意味をなさなくなってしまう。今回は勝ちに向けて最適化することを意識した。
そしてデッキレシピについては世の中に溢れかえっているので、ここでは深くは追求しない。特殊な構築の統率者では通じない面もあると思う。が、個別の特殊なケースをたくさん挙げてもキリがないので、あくまで一般論を中心に話し、適宜、具体例も織り交ぜる。
文章量が多くなるので、分割して書いていく。
Agenda
1.EDHと他フォーマットの違い。多人数戦とは?
2.メジャーな戦術(過去のものを含む)
3.マナ加速
4.妨害カード
5.ドローカード
6.統率者を生かした構築とは?
7.具体的な構築指針
8.ヘイトとは?真の脅威が何かを考える
9.アタックは難しい
10.最後に
1.EDHと他フォーマットの違い
何よりも多人数戦であるということ。そのため他のフォーマットでの常識とEDHの常識は大きく異なる。この違いを理解しないと、カードの選定理由やプレイングに大きな差が出る。対戦相手が3人いるということは1:3なのかというと、そうでもない。ボードゲームのような多人数戦のゲームをする人にはなじみがあると思うが、個人個人が自分の勝利を目指す動きをするも、特定の誰かの勢いを止めるために戦況によっては1:3や2:2など結託するような状況が起こりえる。具体的な例を挙げる。
●case 1
自分が鏡割りのキキジキ、士気あふれる徴集兵と順番にキャストした。この場合、無限トークンで攻撃できるので何も妨害されなければ自分の勝ちである。対戦相手A、対戦相手B、対戦相手Cのいずれにも共通することは、このコンボを止めること。そのため、例えばこのようなやり取りが発生する。
自分:鏡割りのキキジキ+士気あふれる徴集兵
対戦相手A:対抗呪文
自分:紅蓮破
無事に呪文が通る
ここまでは普通の1:1のフォーマットでも考えられる、妨害の応酬。しかしEDHではこの後にこうなる。
自分:鏡割りのキキジキ+士気あふれる徴集兵
対戦相手A:対抗呪文
自分:紅蓮破
無事に呪文が通り、キキジキの能力を起動したところで
対戦相手B:剣を隙に
自分:偏向はたき
対戦相手C:狼狽の嵐
残念ながらこれ以上対応できず、コンボ失敗となった。
ここから分かることは、自分が勝利する瞬間には、必ず1:3となってしまうこと。実際に相手が妨害カードを持っているかどうかはともかく、構図の上で1:3となるのは瞬間的には必ず発生する。逆に対戦相手Aの立場からすると、最初の対抗呪文でコンボを打ち消せず、1:1フォーマットならば負けていたが、多人数戦のため他から支援が入った。今回のケースでは妨害を皆が持っていたが、そもそも妨害への対策(紅蓮破や偏向はたき)を必ずしも沢山持っているわけではないため、全員でなくても何人かが対応するということもありえる。
そして、さらに重要な点は、カードアドバンテージの推移。
自分:除去されたキキジキ、紅蓮破、偏向はたき -3
対戦相手A:対抗呪文 -1
対戦相手B:剣を隙に -1
対戦相手C:狼狽の嵐 -1
コンボを仕掛けた自分は一番損をしている。今回は紅蓮破、偏向はたきを使ってやり取りが増えたので痛み分けとなった面もあるが、途中で妨害が尽きればこういう風になるかもしれない。
自分:除去されたキキジキ、紅蓮破 -2
対戦相手A:対抗呪文 -1
対戦相手B:剣を隙に -1
対戦相手C:損失無し! ±0
何もしていない対戦相手Cは、何と相対的にカードアドバンテージ得ている。ドロースペルを打つよりも、マナがかからずにお得な行動じゃない?
まずここで大事なことは
・コンボを仕掛けるときには1:3となる
・最後まで動かない人が一番得をする
ということである。
●case 2
自分:赤単
対戦相手A:5色デッキ
対戦相手B:4色デッキ
対戦相手C:青単
自分が血染めの月をプレイした。その後どうなる?
多色デッキの対戦相手AとBはまともに動けなくなるので処理をしたい。
単色デッキの対戦相手Cは、血染めの月があってもなくても困らない。
そのため、例えばこういうやり取りが発生する。
自分:血染めの月
対戦相手A:対抗呪文
自分:紅蓮破
対戦相手B:秘儀の否定
このままだと血染めの月はカウンターされてしまうが、血染めの月が存在することが対戦相手Cにとってメリットである場合、こうなる。
自分:血染めの月
対戦相手A:対抗呪文
自分:紅蓮破
対戦相手B:秘儀の否定
対戦相手C:狼狽の嵐(→秘儀の否定と対抗呪文を打ち消す)
これで無事血染めの月が着地する。このやり取りの瞬間は2:2の構図となった。
血染めの月に限らず、呪われたトーテム像、無のロッド、安らかなる眠りなどの一部のデッキは勝てなくなるが、存在しても影響が少ないデッキもあるようなカードは、支援が得られる可能性がある。誰かが血染めの月を割ろうとした時に、別の誰かがカウンターで守ってくれるかもしれない。
全てのプレイヤーにとって悪影響になるもの、例えば敵対工作員が出てしまうと、即死コンボの時と同じく、多くの場合は対戦相手3人が結託して処理にいそしむので1:3となってしまうが…
しかし、ここで終わりではない。先ほどのcaseで対戦相手Cにとって血染めの月が存在するメリットは何なのか考える必要がある。
血染めの月が無事に着地した後
対戦相手A:(何もできず)ターンエンド
対戦相手B:(何もできず)ターンエンド
対戦相手C:厳かなモノリスにPower Artifactをつけて無限マナ、歩行バリスタX=1万で負け
※対戦相手Bの手札には呪文嵌めがあったが、血染めの月の影響でうてなかった…
自分の血染めの月で対戦相手AとBのカウンターを減らし、残った妨害カードも使えなくしてしまい、対戦相手Cのサポートをしてしまった。いわゆる漁夫の利である。
このケースのように、コンボにしても他者に影響が強いカードにしても、妨害のやり取りが発生してしまうと、次の致命的な行動に対して誰も介入できなくなってしまう可能性が上がる。対戦相手の妨害が考えられる場面で、迂闊に動くことは別の誰かにチャンスを与えるリスクがあり危ない。例えば血染めの月に対抗呪文を打たれたときに、紅蓮破を持っていても使わないとか、もっと無難な別の行動でお茶を濁すなどの選択肢が出てくる。
すなわち、ここから得られる教訓は、勝つための最適な行動というのは
・必ずしも最初に仕掛ければよいわけではない
・漁夫の利を得るため(もしくは他の誰かに漁夫の利を得られないように)、場合によってはその時の選択肢の中の最強の行動をとらないこと
例外は沢山あるものの、Case 1の通り、基本的に待ちのプレイングが自然とアドが取れて強いのである。
EDHの初心者の良くある勘違いは、「コンボが揃わなかったから負けた」。
勿論、コンボへのアクセスの手段が弱い=揃いにくいという構築上の欠陥が問題かもしれないが、1:1対戦と同様のプレイングをベースにすることで、相対的なアドバンテージの損失や損な立ち回りをしていることも問題である。そして、これに自力で気づくことは中々難しい。
EDHはプレイしたことが無い人からすると、だれが最初に即死コンボを決めるかだけのゲームと思われがちだが、実際には多人数戦特有の駆け引きがあり、多人数戦だからこその強弱の付け方がある。そして、この多人数戦での行動指針というのは、後の戦術やカードの取捨選択に大きくかかわる。コンボや強いカードを引いたからと、順番にたたきつけるだけの人は勝てない。
2.メジャーな戦術(過去のものを含む)
相手の勝ち筋を知ることは、どこに妨害をすればよいのか、どこに妨害をしなくても良いのか(すなわち待つことが出来るか)を判断する上で大事。そこで、いくつかのメジャーな戦術について解説する。全てではないので実戦や様々なデッキ解説記事で知識を増やしていくのが良いと思う。
●むかつき
EDHの初期ライフが40あることを生かしたデッキ。黎明期にはデッキの総コストを35前後に抑えてデッキを全部捲る戦術があった。すなわち
・60-70枚前後の土地
・自爆ランド(一時的に2マナ出る土地)の搭載
・0マナモックス、暗黒の儀式などマナ加速
・可能な限りのチューター(変性など質の悪いチューターも含む)
これにより、最速でむかつきをサーチして、2-3ターン目くらいに仕掛けるというもの。初見ではむかつきを通して後から出てくる致命的なスペルを打ち消せばよいという考えが働くかもしれないが、否定の契約、赤霊破、猿人の指導霊+紅蓮破など合わせられるので大抵は無理。むかつきを消さなければならない。
通してよいむかつき(特化デッキではない場合)と通してはいけないむかつき(特化デッキ)に気づくべきポイントは、①硫黄孔や漆黒の城塞などの自爆ランド②変性のような弱いチューター。これを経由したむかつきは確実に処理した方が良い。まあ、むかつき自体なるべく消した方が良いが。
ちなみに現在は同じ手段は通用しない。何よりもネタが割れている。意志の力、否定の力、激情の後見と0マナカウンターも充実しているので、2ターン目では結構な割合でカウンターを受ける。
現代版のむかつきデッキは、ログラクフ+サイラス・レンに継承されている。
これは、統率者ログラクフを生かして、モックス・アンバー、弱者選別などで更にロケットスタートの可能性を上げて、後述のデモコン+タッサの神託者など他の勝ち筋をハイブリッド、青のカウンターでバックアップする。
冒頭で最初に仕掛けることは良くないといったが、このデッキは例外。引きが強い場合に1-2ターン目に仕掛けることで、速度でごまかすことが出来き、1回くらいはカウンターで後押しできるため存在できる。またインスタントであることも大事で、相手の行動を見てから相手のエンド時に安全にしかける、相手のコンボに合わせてむかつきを使用して、カウンターなどを引き込んで相手のコンボを妨害したうえで自分のターンで勝つなど、奇襲性が高い。
ただし自分が3-4番手だったり、フルタップで隙があるように見えた相手が意志の力を持っていたりで防がれることはあるので絶対的な強さではない。またログラクフ+サイラス・レンの並びから高速むかつきを想起され、積極的にログラクフを除去されるのも厳しい。
逆にいうと、むかつき以外でぶっぱなすコンセプトは、速度やコンボ枚数で劣るためあまり強くないかもしれない。多少ながらも妨害のやり取り、多人数戦でのアドを意識する必要がある。
●タッサの神託者 + Demonic Consultation/汚れた契約
汚れた契約は基本土地までハイランダーの場合のみ。UUBもしくは1UUBと軽い2枚コンボ。
このコンボの厄介な点は、概ねカウンターでしか防げないこと。タッサの神託者のETBに対応して除去を打っても、ライブラリーを0枚にできるので、信心0でも勝ててしまう。また、妨害しにくい2枚コンボだけではないメリットもある。汚れた契約を、例えば瞬唱の魔導士を用いて2回使用すれば、
・1回目の汚れた契約でタッサの神託者まで捲る
・2回目の汚れた契約でライブラリーをすべて取り除く
という感じで勝てる。Demonic Consultationでも同様。デモコンの場合は最初の6枚追放にタッサの神託者が含まれていると自殺することになるが。
そのため、汚れた契約 + 墓地回収、汚れた契約 + Demonic Consultationなど無数の組み合わせでコンボが出来る。インスタントの墓地妨害として使いやすい有毒の蘇生でも出来る。対戦相手のターン終了時に汚れた契約でタッサの神託者を手に入れ、有毒の蘇生で汚れた契約をトップに積み、次の自分のドローステップで引き直す。この組み合わせの柔軟さも使いやすさのポイント。
現在のEDH環境の基本的なフィニッシャー。組み合わせやすさ、軽さ、妨害しにくさのどれも優れている。当然だが、これを念頭にゲームは進めなければならない。
だからと言って、タッサの神託者対策で倦怠の宝珠を入れようという話ではない。もちろん入れても良い。だが、引かなければ終わりなのでもっと汎用的に対策すべきである。
大事なことは、「盤面にとらわれないこと」
関係ないボードのやり取りをしている間に、青黒のデッキはひっそりと手札でコンボを整えている。「展開しているからヤバイ」「血染めの月はヤバイ」と盤面だけで脅威を語ってはいけない。
普通、デッキごとに勝てる条件は違う。タッサの神託者のように手札にコンボパーツ2枚と3-4マナで勝てるものもあれば、同じ2枚コンボでももっと沢山マナが必要なもの、特定の1枚で勝てるけどマナが重いもの、統率者が生存してターンが返ってくると勝てるもの。それぞれ妨害の刺しどころは違う。一律で場をまっさらにするという考えは、手札から少ないマナで奇襲できる、タッサの神託者やむかつきに滅茶苦茶弱くなる。
盤面の脅威だけでなく、勝ち手段までの道のりが遠いか近いかで判断すべきである。
勢いよく展開するデッキに気を取られて、結局最後は展開を必須としないコンボデッキが勝ち続けるというのは良くあること。
タッサの神託者デッキを相手にするうえで大事なことは、各デッキの刺しどころを把握して不要な妨害を使わないこと。倦怠の宝珠やその他置物で黙らせた気でいても、皆の妨害が使われたところを見て、エンド時サイクロンの裂け目超過から全部解決である。たくさん並んだエルフを生かして、むかつきやタッサの神託者を使うデッキを殴らせるなど、駆け引きを行っていかないといけない。それが多人数戦なのだから。
●隠遁ドルイド
過去の遺物。しかし、EDHを理解する上では大事なコンボ。
基本土地を入れないことでライブラリーをすべて墓地に遅れるので、ナルコメーバ、命運縫いを場に出し、戦慄の復活のフラッシュバックを使う。昔はごちゃごちゃしたことをしていたが、今ならタッサの神託者を釣って勝ち。
このコンボが使われない最大の理由は召喚酔い。
冒頭で即死コンボの時には1:3になると話したところだが、オープンリーチでターンを返すので、相手は対処するためのマナも時間的猶予もある。これを出して無事にターンが返ってくる環境だったら、相手のデッキに欠陥があるが相手が事故を起こしているだけ。
●生き埋め+再活性(壊死のウーズ、歩行バリスタ、Phyrexian Devourer)
ウーズコンボ。タッサの神託者が出る以前、一時期猛威を振るっていた。今でも青がないデッキなら採用する価値は十分ある。
壊死のウーズを釣って、Phyrexian Devourerの効果で+1/+1カウンターを乗せつつ、歩行バリスタでダメージに変換する。ライブラリーの総コスト分ダメージを与えられる。少し重めに構築しないといけないが、青ナシの黒デッキなら大抵は少し重くなり、フェッチランドや魔力の墓所で勝手にライフが減っていることもあるので構築段階で総コスト140くらいでも十分である。
このコンボが流行った要因としては、除去が効かないこと。
Phyrexian Devourerと歩行バリスタの能力をひとつずつ解決していくことで、壊死のウーズに除去を当てても、対応して動ける。刹那つき除去でないと無意味。主に墓地対策かカウンターでしか処理できないが、墓地対策は汎用性が低いし、青がないデッキにとっては防ぐことが難しいコンボだった。
黒にはリアニメイトスペルが多い=代替パーツが多いことに加えて、生き埋め + 壊死のウーズでもコンボになるし、適者生存なら1枚で墓地送りとサーチが全部行える。
ただし今はウーズコンボの長所を継承しつつ、呪われたトーテム像や墓地対策を克服したタッサの神託者が優勢。あえて汎用性の低い墓地対策を使う必要はない。一応、倦怠の宝珠が効かないのでメリットがないわけでもないし、もちろん青がない黒デッキであれば勝ち筋として考慮しても良い。
人によってはコンボパーツの多さ(=デッキに無駄枠が増えること)や構築の制限のデメリットを強調する人もいるが、勝つ瞬間に1:3となることを考えると、コンボは妨害を受けにくいものが良いに決まっているので、黒単では決定力だけ言えば上位のコンボ。
●死の国からの脱出
ライオンの瞳のダイアモンド、思考停止と組み合わせるのは他の環境と同じ。そのまま使うと3枚コンボで弱いのだが、直観1枚で一気に集めることが出来る(セヴィンの再利用、死の国からの脱出、ライオンの瞳のダイアモンドとサーチし、直観を再利用する)。
死の国からの脱出が出てくる場面は、墓地が肥えていたり、コンボが決まっている時なので滅茶苦茶強いカードに見える。しかし強い場面でしか出てこないカードなので、かなりバイアスがかかっている。序盤にそれぞれのパーツを引いても使い道がない。
コンボとしてはタッサの神託者の方が格上。ゲームを決める機会はそれなりにあると思うが、取り立てて対策するものではなく、汎用的な対策カードで戦うだけで良い。
●Timetwister + 船殻破り
Timetwisterを始めとする俗にいう7ドロー(全員の手札を引き直すカード)と、相手のドローをとがめるカードのコンボ。これ自体ではゲームに勝てないが、例えばTimetwister + 概念泥棒だと相手の手札は0枚、自分は28枚になるのでほぼ勝ちだろう。
それぞれのパーツに代替カードが多くて揃いやすいこと、単品でも機能する点が強い。対策は比較的簡単で、ドローを咎める船殻破り、概念泥棒などは除去が刺さるので、除去を構えていればよいし、自分が船殻破りを出して強烈な反撃を仕掛けることもできる(妨害を構えるというのはEDHでの基本的な動きになるので、特別な行動を要するわけではない)。
●変幻の大男
かつては閃光と組み合わせて最強コンボだった。今は一部のデッキで使われるのみ。
強く使うためには黒が最低限必要。
例えば納墓で変幻の大男を落とし、御霊の足跡やネクロマンシー(インスタントプレイ)を使うことで効率よく戦場から墓地に落とせる。そこから
臓物の予見者+ファイレクシアの発掘者
をサーチし、変幻の大男をリアニメイトして生贄で更に能力を誘発。
不浄なる者、ミケウス+歩行バリスタ
をサーチすることで、臓物の予見者+ミケウス+バリスタの無限ダメージが完成する。
変幻の大男のコンボの始動手段としては
・納墓+御霊の足跡
・納墓+ネクロマンシー
・自然の秩序+生贄手段
・変幻の大男+臓物の予見者
など、バリエーションがあるので組み合わせが豊富で揃えやすい。
また最初に変幻の大男から持ってくるカードを、臓物の予見者、森を護る者、ボディ・スナッチャーとすることで、生物除去も土地の枚数まで回避可能になる。白が入っている場合、最初のサーチで
臓物の予見者、堂々たる撤廃者、呪文探究者(再活性をサーチして変幻の大男を釣りなおす)
といった感じで堂々たる撤廃者を挟まれて墓地対策の挟みどころが無くなる。この場合黒1マナが余分に必要だが、手札に再活性を持っている場合は、呪文探究者の代わりにマナを増やすカード(ブラッド・ペット)で代替できるのでフルタップでも決められる。そのため最初のサーチを解決する前に何らかの対処をしたい。かといって、最初に変幻の大男が墓地に落ちた時に、墓地対策で変幻の大男を追放して、釣りなおす手立てを止めても、
タッサの神託者、ブラッド・ペット、呪文探究者(デモコン)
で勝ててしまう。多色であるほどバリエーションが豊富で何が出てくるか分からないので、変幻の大男のPIGを誘発させないか、誘発型能力を打ち消すのが理想。
●ズアー
これも過去の遺物。
アタックでネクロポーテンスを持ってくることで、大量アドバンテージが約束されているし、そもそも3-4マナくらいある状態で、ネクロで30枚引けば終了ステップに勝てる(詳細は割愛。気になる人はタグから過去の自分のズアーを参照)。これを統率者という確実に使える枠で仕掛けてくるので安定感は抜群。
廃れた理由は隠遁ドルイドと同じでターンを返さなければならないから。ズアーに攻撃されると死んでしまうので、皆全力で対処する。
この手のコンボ特化の行動をするにあたって、1ターン待たないといけないというのは致命的。ズアーは統率者という確実に使えるポジションで勝利に直結する行動がとれるが、まともに殴らせてもらえず、誰かに漁夫の利を与える立場になりがち。
同じようにライフを使う高速コンボ特化ならば、即効性のある、むかつきを使うべきで、使うことで妨害の集中攻撃を浴び、相対的なアドロスが約束されるズアーではなく、別の統率者を使った方が良い。
●野生の心、セルヴァラ・養育者、マーウィン
それぞれ統率者として使うのだが、同じような戦法。
1ターン目 ラノワールのエルフなどのマナクリ
2ターン目 セルヴァラ/マーウィン
3ターン目に高パワー生物を出す or 激励などで統率者のパワーを上げ、クウィリーオン・レインジャーなどのアンタップ手段、リシュカーの巧技などの大量ドローを繰り返し、さながらMOMAのように動く。どこかで威圧の杖や暗黒のマントル、ティムールの剣歯虎+αにたどり着いて無限マナとなる。
妨害無しであれば安定したキルターンが約束されるが、やはり1ターン待たないといけないというのは辛い。3KILL率は滅茶苦茶高いわけでもないしEDH全体でみても妨害が構えられないほど早いわけではない。アンタップに対応して除去を当てれば多くの場合はコンボが止まるということから、それなりに見逃されるので、一見つながらなそうな微妙なドロー、例えばリシュカーの巧技で4枚ドローとかのような行動から始まり、たまたま仕掛ける札を重ね引きすると、勝てる。冒頭の多人数戦での原則の通り、即死しない行動に対してカウンターは使いたくないので、見逃しているうちにカウンターの打ちどころを失って(もしくは緑単側の手数が増えすぎてカウンターが追い付かなくなって)負けるというのはありがちな話。
しかし現実的には見逃されたからと言って、コンボに突っ走っても、妨害の的になって誰かに漁夫の利を与えることも多い。押し切れることは少ないので、リカバリー出来るよう土地や手札の補充を優先する。
もともとは3KILLぶっぱデッキとして構築をスタートしたはずなのだが、それでは勝てないので、統率者をマナ加速として使いつつ、森林の怒声吠えのようなアドを取れるファッティをちょくちょく並べながら、隙を伺いながら殴るデッキというのが、今の形。
派手に盤面に並べる特性上、狙われやすいのが欠点。特に初心者から狙われる。タッサの神託者デッキを使っている場合は是非とも同卓したくて、初心者の目がみんな緑に集まって、勝手に妨害カードを消耗してくれるので、非常に勝ちやすい(笑)
滅茶苦茶沢山のマナと手札が潤っていない限り、緑単はいきなり勝つことは出来ない。基本的には1ターン帰ってこないと、すなわち召喚酔いが解けないと無理。
この時差を把握して、ほどほどに妨害を入れないと、同卓するタッサの神託者にカモられる。緑単が同卓した場合、対戦相手全員が理解していないと、手札でコンボを揃えるデッキの勝率が上がる。実際にあるイベントでの対戦では
緑単:2ターン目マーウィン、3ターン目に展開してエンド
黒単:吸血の教示者を使用して毒の濁流
イナーラ:即死コンボを決めて勝ち
という茶番のようなゲームがあったが、これは典型的なEDHの罠。しかし卓の全員の理解度が高くないと、頻発する事態になる。
●イナーラ
さて、上で少し触れたイナーラについても、注意が必要なので解説する。
上で挙げたズアー、セルヴァラ、マーウィンは召喚酔いが解けて初めて力を発揮する。イナーラは統率者を場に出す必要がなく、呪文探究者と黒1マナだけで勝てるので(コンボの詳細は割愛)通常は4マナくらいで勝ち。引くべきキーカードは呪文探究者1枚だけで、むかつきよりも軽い。ただ、4マナという最低限のマナからスタートすると呪文探究者への除去が効く。
即効性のあるコンボなので、「マナしかないから危険じゃない」が通用しない。そのため盤面の展開の良し悪しのみを判断基準にすると、最後に勝利をかっさらわれる。
1枚コンボは魅力に見えるが、昨今のEDH環境は軽い妨害が大量に詰まれているので、呪文探究者とのコンボしか出来ない統率者は足を引っ張りがちで、トラシオスのようなカードアドバンテージを稼げる統率者に押されがち。
●トラシオス
トラシオスの強さを理解することはEDHを理解すること。
自分は発売当初、なんとなく無限マナの使い先というレベルでしか認識しておらず、当時は弱いと思っていた時期もある。しかし真の使い道に気が付いたときに、トラシオスはゆるぎない最強クラスのカードであることがわかり、今も愛用し続けている。
「継続的にアドバンテージを稼げるから強い」
これはトラシオスに対する誤った解釈である。なぜならば、カードを引くだけならばズアーからネクロポーテンスの方が沢山引けるし、そもそもゲームに勝てばカードをたくさん必要もないので即死する統率者を使えばいい。
ここで大事なのは冒頭の話。
危険な行動は1:3となって、対戦相手全員から対処されてしまうということ。
ズアーからネクロポーテンスは机上の空論で、実戦ではズアーはアタックさせてもらえない。即死コンボに近いジェネラルほど、ゲーム中には構築の段階で想定した動きは出来ずに、ひたすら対処され続ける虚無のゲームをすることになる。EDHでの理想的な行動指針の一つの例としては
・即死コンボは軽くて奇襲性があるもの
・即死コンボ以外の行動は相手に妨害されないこと
妨害を受けるというのは、もちろんそれだけでもディスアドバンテージなのだが、誰かが誰かに妨害しているところを傍目に見ることは自分にとってのアドバンテージである。そのため行動指針としては勝つか、ぬるい行動か、の二択が大事になる。
トラシオスはそれ単独では勝てない。一気に手札が10枚も増えることもなければ、誰かに致命傷を与えて再起不能のすることもない。場にいても、多くの人にとっては無害だし、トラシオスより危険なもので溢れている、将来訪れる危機的状況や自分のコンボを通すために妨害カードは温存したくなる。
だから、トラシオスは生き残って確実に仕事をする。アドの損失はないし、自分以外のプレイヤーに妨害の矛先が向くことで、相対的にアドが取れる。トラシオスの能力自体でゲーム中に引くカードは多くなく、3枚程度しかないこともザラ。沢山カードを引くから強いわけではない点は強調したい。
このような効果を発揮できる統率者は他にもいるが、トラシオスは圧倒的に軽いし、共闘で黒を組み合わせることで、タッサの神託者コンボが使えるようになる。
これが強い点。
真の強さは相対的なアドにあり、最近ではトラシオスの強さも知れ渡り他の統率者諸共リセットで流される機会も増えたが(トラシオスデッキでは1マナクリの損失も痛手なのでリセットは弱点)、リセットは頻発するわけではないし、依然として強いことには変わりない。
ちなみに訓練場や種子生まれの詩神と組み合わせると爆アドエンジンに早変わりする。しかしこの場合は、トラシオスの脅威が卓内で一気に上がるため、せっかくのメリットである妨害の標的にされにくい点が消える。使用タイミングが重要で、相手がオープンリーチをかけた返し、誰かが仕掛けて妨害合戦が発生して卓内の除去が減った状況などで出すことで、実質的な勝ち確に持っていける。
●ギトラグの怪物
デッキは複雑で、EDHでしか利用しないようなマニアックなルールに精通する必要がある。初級者ではデッキを理解して妨害の入れどころを検討するは難しいので、ターンを返したら死ぬ、たまに出てきてそのまま負けるという認識で良い。つまりズアーなどと同じように直ぐに対処する。
続く
昨今のEDH人気の高まりに乗り遅れてはいるが、初級者向けの解説というのは意外にも少ない。厳密にいえばデッキを作ったことが無い初心者向けというものはあるが、これからガチEDHを始めたいと思う人向けの解説が不十分。そこで重い腰を上げてついに書き上げた。
まず前提として、①4人対戦②勝利を目指す、というものを挙げる。カジュアルに楽しむのもEDHの面白さではあるが、一定の目標がないと「好きなカードを使ってください」で終わってしまうので解説の意味をなさなくなってしまう。今回は勝ちに向けて最適化することを意識した。
そしてデッキレシピについては世の中に溢れかえっているので、ここでは深くは追求しない。特殊な構築の統率者では通じない面もあると思う。が、個別の特殊なケースをたくさん挙げてもキリがないので、あくまで一般論を中心に話し、適宜、具体例も織り交ぜる。
文章量が多くなるので、分割して書いていく。
Agenda
1.EDHと他フォーマットの違い。多人数戦とは?
2.メジャーな戦術(過去のものを含む)
3.マナ加速
4.妨害カード
5.ドローカード
6.統率者を生かした構築とは?
7.具体的な構築指針
8.ヘイトとは?真の脅威が何かを考える
9.アタックは難しい
10.最後に
1.EDHと他フォーマットの違い
何よりも多人数戦であるということ。そのため他のフォーマットでの常識とEDHの常識は大きく異なる。この違いを理解しないと、カードの選定理由やプレイングに大きな差が出る。対戦相手が3人いるということは1:3なのかというと、そうでもない。ボードゲームのような多人数戦のゲームをする人にはなじみがあると思うが、個人個人が自分の勝利を目指す動きをするも、特定の誰かの勢いを止めるために戦況によっては1:3や2:2など結託するような状況が起こりえる。具体的な例を挙げる。
●case 1
自分が鏡割りのキキジキ、士気あふれる徴集兵と順番にキャストした。この場合、無限トークンで攻撃できるので何も妨害されなければ自分の勝ちである。対戦相手A、対戦相手B、対戦相手Cのいずれにも共通することは、このコンボを止めること。そのため、例えばこのようなやり取りが発生する。
自分:鏡割りのキキジキ+士気あふれる徴集兵
対戦相手A:対抗呪文
自分:紅蓮破
無事に呪文が通る
ここまでは普通の1:1のフォーマットでも考えられる、妨害の応酬。しかしEDHではこの後にこうなる。
自分:鏡割りのキキジキ+士気あふれる徴集兵
対戦相手A:対抗呪文
自分:紅蓮破
無事に呪文が通り、キキジキの能力を起動したところで
対戦相手B:剣を隙に
自分:偏向はたき
対戦相手C:狼狽の嵐
残念ながらこれ以上対応できず、コンボ失敗となった。
ここから分かることは、自分が勝利する瞬間には、必ず1:3となってしまうこと。実際に相手が妨害カードを持っているかどうかはともかく、構図の上で1:3となるのは瞬間的には必ず発生する。逆に対戦相手Aの立場からすると、最初の対抗呪文でコンボを打ち消せず、1:1フォーマットならば負けていたが、多人数戦のため他から支援が入った。今回のケースでは妨害を皆が持っていたが、そもそも妨害への対策(紅蓮破や偏向はたき)を必ずしも沢山持っているわけではないため、全員でなくても何人かが対応するということもありえる。
そして、さらに重要な点は、カードアドバンテージの推移。
自分:除去されたキキジキ、紅蓮破、偏向はたき -3
対戦相手A:対抗呪文 -1
対戦相手B:剣を隙に -1
対戦相手C:狼狽の嵐 -1
コンボを仕掛けた自分は一番損をしている。今回は紅蓮破、偏向はたきを使ってやり取りが増えたので痛み分けとなった面もあるが、途中で妨害が尽きればこういう風になるかもしれない。
自分:除去されたキキジキ、紅蓮破 -2
対戦相手A:対抗呪文 -1
対戦相手B:剣を隙に -1
対戦相手C:損失無し! ±0
何もしていない対戦相手Cは、何と相対的にカードアドバンテージ得ている。ドロースペルを打つよりも、マナがかからずにお得な行動じゃない?
まずここで大事なことは
・コンボを仕掛けるときには1:3となる
・最後まで動かない人が一番得をする
ということである。
●case 2
自分:赤単
対戦相手A:5色デッキ
対戦相手B:4色デッキ
対戦相手C:青単
自分が血染めの月をプレイした。その後どうなる?
多色デッキの対戦相手AとBはまともに動けなくなるので処理をしたい。
単色デッキの対戦相手Cは、血染めの月があってもなくても困らない。
そのため、例えばこういうやり取りが発生する。
自分:血染めの月
対戦相手A:対抗呪文
自分:紅蓮破
対戦相手B:秘儀の否定
このままだと血染めの月はカウンターされてしまうが、血染めの月が存在することが対戦相手Cにとってメリットである場合、こうなる。
自分:血染めの月
対戦相手A:対抗呪文
自分:紅蓮破
対戦相手B:秘儀の否定
対戦相手C:狼狽の嵐(→秘儀の否定と対抗呪文を打ち消す)
これで無事血染めの月が着地する。このやり取りの瞬間は2:2の構図となった。
血染めの月に限らず、呪われたトーテム像、無のロッド、安らかなる眠りなどの一部のデッキは勝てなくなるが、存在しても影響が少ないデッキもあるようなカードは、支援が得られる可能性がある。誰かが血染めの月を割ろうとした時に、別の誰かがカウンターで守ってくれるかもしれない。
全てのプレイヤーにとって悪影響になるもの、例えば敵対工作員が出てしまうと、即死コンボの時と同じく、多くの場合は対戦相手3人が結託して処理にいそしむので1:3となってしまうが…
しかし、ここで終わりではない。先ほどのcaseで対戦相手Cにとって血染めの月が存在するメリットは何なのか考える必要がある。
血染めの月が無事に着地した後
対戦相手A:(何もできず)ターンエンド
対戦相手B:(何もできず)ターンエンド
対戦相手C:厳かなモノリスにPower Artifactをつけて無限マナ、歩行バリスタX=1万で負け
※対戦相手Bの手札には呪文嵌めがあったが、血染めの月の影響でうてなかった…
自分の血染めの月で対戦相手AとBのカウンターを減らし、残った妨害カードも使えなくしてしまい、対戦相手Cのサポートをしてしまった。いわゆる漁夫の利である。
このケースのように、コンボにしても他者に影響が強いカードにしても、妨害のやり取りが発生してしまうと、次の致命的な行動に対して誰も介入できなくなってしまう可能性が上がる。対戦相手の妨害が考えられる場面で、迂闊に動くことは別の誰かにチャンスを与えるリスクがあり危ない。例えば血染めの月に対抗呪文を打たれたときに、紅蓮破を持っていても使わないとか、もっと無難な別の行動でお茶を濁すなどの選択肢が出てくる。
すなわち、ここから得られる教訓は、勝つための最適な行動というのは
・必ずしも最初に仕掛ければよいわけではない
・漁夫の利を得るため(もしくは他の誰かに漁夫の利を得られないように)、場合によってはその時の選択肢の中の最強の行動をとらないこと
例外は沢山あるものの、Case 1の通り、基本的に待ちのプレイングが自然とアドが取れて強いのである。
EDHの初心者の良くある勘違いは、「コンボが揃わなかったから負けた」。
勿論、コンボへのアクセスの手段が弱い=揃いにくいという構築上の欠陥が問題かもしれないが、1:1対戦と同様のプレイングをベースにすることで、相対的なアドバンテージの損失や損な立ち回りをしていることも問題である。そして、これに自力で気づくことは中々難しい。
EDHはプレイしたことが無い人からすると、だれが最初に即死コンボを決めるかだけのゲームと思われがちだが、実際には多人数戦特有の駆け引きがあり、多人数戦だからこその強弱の付け方がある。そして、この多人数戦での行動指針というのは、後の戦術やカードの取捨選択に大きくかかわる。コンボや強いカードを引いたからと、順番にたたきつけるだけの人は勝てない。
2.メジャーな戦術(過去のものを含む)
相手の勝ち筋を知ることは、どこに妨害をすればよいのか、どこに妨害をしなくても良いのか(すなわち待つことが出来るか)を判断する上で大事。そこで、いくつかのメジャーな戦術について解説する。全てではないので実戦や様々なデッキ解説記事で知識を増やしていくのが良いと思う。
●むかつき
EDHの初期ライフが40あることを生かしたデッキ。黎明期にはデッキの総コストを35前後に抑えてデッキを全部捲る戦術があった。すなわち
・60-70枚前後の土地
・自爆ランド(一時的に2マナ出る土地)の搭載
・0マナモックス、暗黒の儀式などマナ加速
・可能な限りのチューター(変性など質の悪いチューターも含む)
これにより、最速でむかつきをサーチして、2-3ターン目くらいに仕掛けるというもの。初見ではむかつきを通して後から出てくる致命的なスペルを打ち消せばよいという考えが働くかもしれないが、否定の契約、赤霊破、猿人の指導霊+紅蓮破など合わせられるので大抵は無理。むかつきを消さなければならない。
通してよいむかつき(特化デッキではない場合)と通してはいけないむかつき(特化デッキ)に気づくべきポイントは、①硫黄孔や漆黒の城塞などの自爆ランド②変性のような弱いチューター。これを経由したむかつきは確実に処理した方が良い。まあ、むかつき自体なるべく消した方が良いが。
ちなみに現在は同じ手段は通用しない。何よりもネタが割れている。意志の力、否定の力、激情の後見と0マナカウンターも充実しているので、2ターン目では結構な割合でカウンターを受ける。
現代版のむかつきデッキは、ログラクフ+サイラス・レンに継承されている。
これは、統率者ログラクフを生かして、モックス・アンバー、弱者選別などで更にロケットスタートの可能性を上げて、後述のデモコン+タッサの神託者など他の勝ち筋をハイブリッド、青のカウンターでバックアップする。
冒頭で最初に仕掛けることは良くないといったが、このデッキは例外。引きが強い場合に1-2ターン目に仕掛けることで、速度でごまかすことが出来き、1回くらいはカウンターで後押しできるため存在できる。またインスタントであることも大事で、相手の行動を見てから相手のエンド時に安全にしかける、相手のコンボに合わせてむかつきを使用して、カウンターなどを引き込んで相手のコンボを妨害したうえで自分のターンで勝つなど、奇襲性が高い。
ただし自分が3-4番手だったり、フルタップで隙があるように見えた相手が意志の力を持っていたりで防がれることはあるので絶対的な強さではない。またログラクフ+サイラス・レンの並びから高速むかつきを想起され、積極的にログラクフを除去されるのも厳しい。
逆にいうと、むかつき以外でぶっぱなすコンセプトは、速度やコンボ枚数で劣るためあまり強くないかもしれない。多少ながらも妨害のやり取り、多人数戦でのアドを意識する必要がある。
●タッサの神託者 + Demonic Consultation/汚れた契約
汚れた契約は基本土地までハイランダーの場合のみ。UUBもしくは1UUBと軽い2枚コンボ。
このコンボの厄介な点は、概ねカウンターでしか防げないこと。タッサの神託者のETBに対応して除去を打っても、ライブラリーを0枚にできるので、信心0でも勝ててしまう。また、妨害しにくい2枚コンボだけではないメリットもある。汚れた契約を、例えば瞬唱の魔導士を用いて2回使用すれば、
・1回目の汚れた契約でタッサの神託者まで捲る
・2回目の汚れた契約でライブラリーをすべて取り除く
という感じで勝てる。Demonic Consultationでも同様。デモコンの場合は最初の6枚追放にタッサの神託者が含まれていると自殺することになるが。
そのため、汚れた契約 + 墓地回収、汚れた契約 + Demonic Consultationなど無数の組み合わせでコンボが出来る。インスタントの墓地妨害として使いやすい有毒の蘇生でも出来る。対戦相手のターン終了時に汚れた契約でタッサの神託者を手に入れ、有毒の蘇生で汚れた契約をトップに積み、次の自分のドローステップで引き直す。この組み合わせの柔軟さも使いやすさのポイント。
現在のEDH環境の基本的なフィニッシャー。組み合わせやすさ、軽さ、妨害しにくさのどれも優れている。当然だが、これを念頭にゲームは進めなければならない。
だからと言って、タッサの神託者対策で倦怠の宝珠を入れようという話ではない。もちろん入れても良い。だが、引かなければ終わりなのでもっと汎用的に対策すべきである。
大事なことは、「盤面にとらわれないこと」
関係ないボードのやり取りをしている間に、青黒のデッキはひっそりと手札でコンボを整えている。「展開しているからヤバイ」「血染めの月はヤバイ」と盤面だけで脅威を語ってはいけない。
普通、デッキごとに勝てる条件は違う。タッサの神託者のように手札にコンボパーツ2枚と3-4マナで勝てるものもあれば、同じ2枚コンボでももっと沢山マナが必要なもの、特定の1枚で勝てるけどマナが重いもの、統率者が生存してターンが返ってくると勝てるもの。それぞれ妨害の刺しどころは違う。一律で場をまっさらにするという考えは、手札から少ないマナで奇襲できる、タッサの神託者やむかつきに滅茶苦茶弱くなる。
盤面の脅威だけでなく、勝ち手段までの道のりが遠いか近いかで判断すべきである。
勢いよく展開するデッキに気を取られて、結局最後は展開を必須としないコンボデッキが勝ち続けるというのは良くあること。
タッサの神託者デッキを相手にするうえで大事なことは、各デッキの刺しどころを把握して不要な妨害を使わないこと。倦怠の宝珠やその他置物で黙らせた気でいても、皆の妨害が使われたところを見て、エンド時サイクロンの裂け目超過から全部解決である。たくさん並んだエルフを生かして、むかつきやタッサの神託者を使うデッキを殴らせるなど、駆け引きを行っていかないといけない。それが多人数戦なのだから。
●隠遁ドルイド
過去の遺物。しかし、EDHを理解する上では大事なコンボ。
基本土地を入れないことでライブラリーをすべて墓地に遅れるので、ナルコメーバ、命運縫いを場に出し、戦慄の復活のフラッシュバックを使う。昔はごちゃごちゃしたことをしていたが、今ならタッサの神託者を釣って勝ち。
このコンボが使われない最大の理由は召喚酔い。
冒頭で即死コンボの時には1:3になると話したところだが、オープンリーチでターンを返すので、相手は対処するためのマナも時間的猶予もある。これを出して無事にターンが返ってくる環境だったら、相手のデッキに欠陥があるが相手が事故を起こしているだけ。
●生き埋め+再活性(壊死のウーズ、歩行バリスタ、Phyrexian Devourer)
ウーズコンボ。タッサの神託者が出る以前、一時期猛威を振るっていた。今でも青がないデッキなら採用する価値は十分ある。
壊死のウーズを釣って、Phyrexian Devourerの効果で+1/+1カウンターを乗せつつ、歩行バリスタでダメージに変換する。ライブラリーの総コスト分ダメージを与えられる。少し重めに構築しないといけないが、青ナシの黒デッキなら大抵は少し重くなり、フェッチランドや魔力の墓所で勝手にライフが減っていることもあるので構築段階で総コスト140くらいでも十分である。
このコンボが流行った要因としては、除去が効かないこと。
Phyrexian Devourerと歩行バリスタの能力をひとつずつ解決していくことで、壊死のウーズに除去を当てても、対応して動ける。刹那つき除去でないと無意味。主に墓地対策かカウンターでしか処理できないが、墓地対策は汎用性が低いし、青がないデッキにとっては防ぐことが難しいコンボだった。
黒にはリアニメイトスペルが多い=代替パーツが多いことに加えて、生き埋め + 壊死のウーズでもコンボになるし、適者生存なら1枚で墓地送りとサーチが全部行える。
ただし今はウーズコンボの長所を継承しつつ、呪われたトーテム像や墓地対策を克服したタッサの神託者が優勢。あえて汎用性の低い墓地対策を使う必要はない。一応、倦怠の宝珠が効かないのでメリットがないわけでもないし、もちろん青がない黒デッキであれば勝ち筋として考慮しても良い。
人によってはコンボパーツの多さ(=デッキに無駄枠が増えること)や構築の制限のデメリットを強調する人もいるが、勝つ瞬間に1:3となることを考えると、コンボは妨害を受けにくいものが良いに決まっているので、黒単では決定力だけ言えば上位のコンボ。
●死の国からの脱出
ライオンの瞳のダイアモンド、思考停止と組み合わせるのは他の環境と同じ。そのまま使うと3枚コンボで弱いのだが、直観1枚で一気に集めることが出来る(セヴィンの再利用、死の国からの脱出、ライオンの瞳のダイアモンドとサーチし、直観を再利用する)。
死の国からの脱出が出てくる場面は、墓地が肥えていたり、コンボが決まっている時なので滅茶苦茶強いカードに見える。しかし強い場面でしか出てこないカードなので、かなりバイアスがかかっている。序盤にそれぞれのパーツを引いても使い道がない。
コンボとしてはタッサの神託者の方が格上。ゲームを決める機会はそれなりにあると思うが、取り立てて対策するものではなく、汎用的な対策カードで戦うだけで良い。
●Timetwister + 船殻破り
Timetwisterを始めとする俗にいう7ドロー(全員の手札を引き直すカード)と、相手のドローをとがめるカードのコンボ。これ自体ではゲームに勝てないが、例えばTimetwister + 概念泥棒だと相手の手札は0枚、自分は28枚になるのでほぼ勝ちだろう。
それぞれのパーツに代替カードが多くて揃いやすいこと、単品でも機能する点が強い。対策は比較的簡単で、ドローを咎める船殻破り、概念泥棒などは除去が刺さるので、除去を構えていればよいし、自分が船殻破りを出して強烈な反撃を仕掛けることもできる(妨害を構えるというのはEDHでの基本的な動きになるので、特別な行動を要するわけではない)。
●変幻の大男
かつては閃光と組み合わせて最強コンボだった。今は一部のデッキで使われるのみ。
強く使うためには黒が最低限必要。
例えば納墓で変幻の大男を落とし、御霊の足跡やネクロマンシー(インスタントプレイ)を使うことで効率よく戦場から墓地に落とせる。そこから
臓物の予見者+ファイレクシアの発掘者
をサーチし、変幻の大男をリアニメイトして生贄で更に能力を誘発。
不浄なる者、ミケウス+歩行バリスタ
をサーチすることで、臓物の予見者+ミケウス+バリスタの無限ダメージが完成する。
変幻の大男のコンボの始動手段としては
・納墓+御霊の足跡
・納墓+ネクロマンシー
・自然の秩序+生贄手段
・変幻の大男+臓物の予見者
など、バリエーションがあるので組み合わせが豊富で揃えやすい。
また最初に変幻の大男から持ってくるカードを、臓物の予見者、森を護る者、ボディ・スナッチャーとすることで、生物除去も土地の枚数まで回避可能になる。白が入っている場合、最初のサーチで
臓物の予見者、堂々たる撤廃者、呪文探究者(再活性をサーチして変幻の大男を釣りなおす)
といった感じで堂々たる撤廃者を挟まれて墓地対策の挟みどころが無くなる。この場合黒1マナが余分に必要だが、手札に再活性を持っている場合は、呪文探究者の代わりにマナを増やすカード(ブラッド・ペット)で代替できるのでフルタップでも決められる。そのため最初のサーチを解決する前に何らかの対処をしたい。かといって、最初に変幻の大男が墓地に落ちた時に、墓地対策で変幻の大男を追放して、釣りなおす手立てを止めても、
タッサの神託者、ブラッド・ペット、呪文探究者(デモコン)
で勝ててしまう。多色であるほどバリエーションが豊富で何が出てくるか分からないので、変幻の大男のPIGを誘発させないか、誘発型能力を打ち消すのが理想。
●ズアー
これも過去の遺物。
アタックでネクロポーテンスを持ってくることで、大量アドバンテージが約束されているし、そもそも3-4マナくらいある状態で、ネクロで30枚引けば終了ステップに勝てる(詳細は割愛。気になる人はタグから過去の自分のズアーを参照)。これを統率者という確実に使える枠で仕掛けてくるので安定感は抜群。
廃れた理由は隠遁ドルイドと同じでターンを返さなければならないから。ズアーに攻撃されると死んでしまうので、皆全力で対処する。
この手のコンボ特化の行動をするにあたって、1ターン待たないといけないというのは致命的。ズアーは統率者という確実に使えるポジションで勝利に直結する行動がとれるが、まともに殴らせてもらえず、誰かに漁夫の利を与える立場になりがち。
同じようにライフを使う高速コンボ特化ならば、即効性のある、むかつきを使うべきで、使うことで妨害の集中攻撃を浴び、相対的なアドロスが約束されるズアーではなく、別の統率者を使った方が良い。
●野生の心、セルヴァラ・養育者、マーウィン
それぞれ統率者として使うのだが、同じような戦法。
1ターン目 ラノワールのエルフなどのマナクリ
2ターン目 セルヴァラ/マーウィン
3ターン目に高パワー生物を出す or 激励などで統率者のパワーを上げ、クウィリーオン・レインジャーなどのアンタップ手段、リシュカーの巧技などの大量ドローを繰り返し、さながらMOMAのように動く。どこかで威圧の杖や暗黒のマントル、ティムールの剣歯虎+αにたどり着いて無限マナとなる。
妨害無しであれば安定したキルターンが約束されるが、やはり1ターン待たないといけないというのは辛い。3KILL率は滅茶苦茶高いわけでもないしEDH全体でみても妨害が構えられないほど早いわけではない。アンタップに対応して除去を当てれば多くの場合はコンボが止まるということから、それなりに見逃されるので、一見つながらなそうな微妙なドロー、例えばリシュカーの巧技で4枚ドローとかのような行動から始まり、たまたま仕掛ける札を重ね引きすると、勝てる。冒頭の多人数戦での原則の通り、即死しない行動に対してカウンターは使いたくないので、見逃しているうちにカウンターの打ちどころを失って(もしくは緑単側の手数が増えすぎてカウンターが追い付かなくなって)負けるというのはありがちな話。
しかし現実的には見逃されたからと言って、コンボに突っ走っても、妨害の的になって誰かに漁夫の利を与えることも多い。押し切れることは少ないので、リカバリー出来るよう土地や手札の補充を優先する。
もともとは3KILLぶっぱデッキとして構築をスタートしたはずなのだが、それでは勝てないので、統率者をマナ加速として使いつつ、森林の怒声吠えのようなアドを取れるファッティをちょくちょく並べながら、隙を伺いながら殴るデッキというのが、今の形。
派手に盤面に並べる特性上、狙われやすいのが欠点。特に初心者から狙われる。タッサの神託者デッキを使っている場合は是非とも同卓したくて、初心者の目がみんな緑に集まって、勝手に妨害カードを消耗してくれるので、非常に勝ちやすい(笑)
滅茶苦茶沢山のマナと手札が潤っていない限り、緑単はいきなり勝つことは出来ない。基本的には1ターン帰ってこないと、すなわち召喚酔いが解けないと無理。
この時差を把握して、ほどほどに妨害を入れないと、同卓するタッサの神託者にカモられる。緑単が同卓した場合、対戦相手全員が理解していないと、手札でコンボを揃えるデッキの勝率が上がる。実際にあるイベントでの対戦では
緑単:2ターン目マーウィン、3ターン目に展開してエンド
黒単:吸血の教示者を使用して毒の濁流
イナーラ:即死コンボを決めて勝ち
という茶番のようなゲームがあったが、これは典型的なEDHの罠。しかし卓の全員の理解度が高くないと、頻発する事態になる。
●イナーラ
さて、上で少し触れたイナーラについても、注意が必要なので解説する。
上で挙げたズアー、セルヴァラ、マーウィンは召喚酔いが解けて初めて力を発揮する。イナーラは統率者を場に出す必要がなく、呪文探究者と黒1マナだけで勝てるので(コンボの詳細は割愛)通常は4マナくらいで勝ち。引くべきキーカードは呪文探究者1枚だけで、むかつきよりも軽い。ただ、4マナという最低限のマナからスタートすると呪文探究者への除去が効く。
即効性のあるコンボなので、「マナしかないから危険じゃない」が通用しない。そのため盤面の展開の良し悪しのみを判断基準にすると、最後に勝利をかっさらわれる。
1枚コンボは魅力に見えるが、昨今のEDH環境は軽い妨害が大量に詰まれているので、呪文探究者とのコンボしか出来ない統率者は足を引っ張りがちで、トラシオスのようなカードアドバンテージを稼げる統率者に押されがち。
●トラシオス
トラシオスの強さを理解することはEDHを理解すること。
自分は発売当初、なんとなく無限マナの使い先というレベルでしか認識しておらず、当時は弱いと思っていた時期もある。しかし真の使い道に気が付いたときに、トラシオスはゆるぎない最強クラスのカードであることがわかり、今も愛用し続けている。
「継続的にアドバンテージを稼げるから強い」
これはトラシオスに対する誤った解釈である。なぜならば、カードを引くだけならばズアーからネクロポーテンスの方が沢山引けるし、そもそもゲームに勝てばカードをたくさん必要もないので即死する統率者を使えばいい。
ここで大事なのは冒頭の話。
危険な行動は1:3となって、対戦相手全員から対処されてしまうということ。
ズアーからネクロポーテンスは机上の空論で、実戦ではズアーはアタックさせてもらえない。即死コンボに近いジェネラルほど、ゲーム中には構築の段階で想定した動きは出来ずに、ひたすら対処され続ける虚無のゲームをすることになる。EDHでの理想的な行動指針の一つの例としては
・即死コンボは軽くて奇襲性があるもの
・即死コンボ以外の行動は相手に妨害されないこと
妨害を受けるというのは、もちろんそれだけでもディスアドバンテージなのだが、誰かが誰かに妨害しているところを傍目に見ることは自分にとってのアドバンテージである。そのため行動指針としては勝つか、ぬるい行動か、の二択が大事になる。
トラシオスはそれ単独では勝てない。一気に手札が10枚も増えることもなければ、誰かに致命傷を与えて再起不能のすることもない。場にいても、多くの人にとっては無害だし、トラシオスより危険なもので溢れている、将来訪れる危機的状況や自分のコンボを通すために妨害カードは温存したくなる。
だから、トラシオスは生き残って確実に仕事をする。アドの損失はないし、自分以外のプレイヤーに妨害の矛先が向くことで、相対的にアドが取れる。トラシオスの能力自体でゲーム中に引くカードは多くなく、3枚程度しかないこともザラ。沢山カードを引くから強いわけではない点は強調したい。
このような効果を発揮できる統率者は他にもいるが、トラシオスは圧倒的に軽いし、共闘で黒を組み合わせることで、タッサの神託者コンボが使えるようになる。
これが強い点。
真の強さは相対的なアドにあり、最近ではトラシオスの強さも知れ渡り他の統率者諸共リセットで流される機会も増えたが(トラシオスデッキでは1マナクリの損失も痛手なのでリセットは弱点)、リセットは頻発するわけではないし、依然として強いことには変わりない。
ちなみに訓練場や種子生まれの詩神と組み合わせると爆アドエンジンに早変わりする。しかしこの場合は、トラシオスの脅威が卓内で一気に上がるため、せっかくのメリットである妨害の標的にされにくい点が消える。使用タイミングが重要で、相手がオープンリーチをかけた返し、誰かが仕掛けて妨害合戦が発生して卓内の除去が減った状況などで出すことで、実質的な勝ち確に持っていける。
●ギトラグの怪物
デッキは複雑で、EDHでしか利用しないようなマニアックなルールに精通する必要がある。初級者ではデッキを理解して妨害の入れどころを検討するは難しいので、ターンを返したら死ぬ、たまに出てきてそのまま負けるという認識で良い。つまりズアーなどと同じように直ぐに対処する。
続く
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