3.マナ加速

細かいことは抜きで結論から言うと、「1マナ以下のマナ加速は詰め込め」。

「マナが多い方が、手数が増えてお得」とか「相手より早く危険なスペルを使える」とか言われることもあるが、それはむしろ逆で、マナ加速をしないと他のプレイヤーに置いていかれるのである。実際に、1ターン目にマナ加速をできなかった場合(もしくは1ターン目に吸血の教示者で魔力の墓所を積むなど加速にアクセスすることもできなかった場合)の勝率は、グダらない限りゼロに等しい。デッキによってかみ合うカードの差異はあろうが、使ってみないと分からない部分なので、何でもいいから沢山使って、まずは1マナ以下の加速が初手に来るようにしたい。その後で使いにくいカードは削ればよい。定番どころで言えば、

極楽鳥
ラノワールのエルフ
エルフの神秘家
フィンドホーンのエルフ
ジョラーガの樹語り
東屋のエルフ
アヴァシンの巡礼者
深き闇のエルフ
貴族の教主
ブラッド・ペット
死儀礼のシャーマン
Elvish Spirit Guide
猿人の指導霊

繁茂
楽園の拡散
花の絨毯

暗黒の儀式
炎の儀式

魔力の墓所
宝石の睡蓮
水蓮の花びら
ライオンの瞳のダイアモンド
モックス・ダイアモンド
金属モックス
オパールのモックス
魔力の櫃
太陽の指輪

古の墳墓
宝石の洞窟


ほくちの壁、Jeweled Amuletなど使いにくいものもある。ちなみに、弱者選別、モックス・アンバー、バネ葉の太鼓、極楽のマントルは通常は1ターン目に安定して使えないと思われるかもしれないが、統率者にログラクフを選ぶことで解決する。現在では有力な候補。

見てもらえばわかる通り、緑のマナクリか、高額なアーティファクトのほぼ二択。緑を含まないデッキを使うのならば、相当な覚悟が必要(金銭的な意味で)。緑以外のデッキは、どうしてもマナアーティファクトに頼る必要があるので、早い段階でのアーティファクト対策は相手の出鼻をくじける。むかつきやネクロポーテンスで大量ドローしてからのマナの増やす手段にもなるので、一部のコンボを止めることもできる。

そして、全てのデッキに入るといっても過言ではない必須カードとして挙げたいのが、宝石の洞窟。モックスは緑のアーティファクト対策が厚いデッキだと使いたくないし、魔力の墓所はアニマーや4色オムナスなど色拘束の強い統率者では抜く選択肢もあるが(勿論統率者以外の呪文には貢献するので使っても良いが)、宝石の洞窟は色マナが出て、土地という安定のリソースのため使わない理由の方が少ない。先手で引いてしまう、後引きで弱いというデメリットはあるが、1マナ以下の加速について言えばいつ引いても強いカードの方が少ない。


ちなみに上記ではタッサの神託者など大して重くないコンボを列挙しがら、なぜマナ加速が必要なのか?

通常はチューターを経由するので、例えばタッサの神託者、汚れた契約に加えて、悪魔の教示者などの余分なマナがかかる。破滅の終焉でタッサの神託者を出すでも良い。1-2マナは余分にかかるものなのである。更に相手の妨害への対策として、沈黙や狼狽の嵐を使おうと思うと、プラスアルファで1-2マナかそれ以上、出来る限りマナが欲しい。コンボ自体は3-4マナでも、ゲーム中に仕掛けるタイミングでは6マナくらい必要になるのである。

だから、マナ加速は多少過剰になったとしても有能。多くのデッキではマナフラッド覚悟で、土地とマナ加速を含めて50枚近くスロットを割いている。細かい理由は抜きで、これが数年来続いてきたEDHで様々なプレイヤーが調整した結果なので、まずはこれを踏襲した方が良い。

特に緑以外では、1マナ加速は十分な量を確保できないことが多々ある。その場合は吸血の教示者→魔力の墓所のような感じで1マナチューターを頭数に加えて誤魔化す。これは、かつては青黒デッキの基本的な動きとして確立していたが、コンボのために温存したいチューターが減ってしまう。話しは逸れるが、閃光+変幻の大男時代には、閃光コンボのためにはマナ加速はほぼ不要で、チューターでマナ加速をもってくる必要がないデッキとして(つまり1ターン目にマナクリを出さずにチューターでコンボを揃えることも選択肢に上がるので)、早いタイミングで仕掛ける頻度も多かった。もしも前のめりのデッキを作りたいのであれば、構築の段階でなるべくチューターで魔力の墓所を持ってこなくても良いくらいには1マナ以下の加速を充実させた方が良い。

タッサの神託者のような色拘束があって、少し仕掛けるタイミングが遅くなるコンボを使う場合は、1マナ以下の加速に加えて、多少2マナ程度のマナ加速を足しても良い。軽い加速はアドを失ったり、色の融通が利かないことが多いので、秘儀の印鑑、友なる石、各種タリスマンや印鑑、自然の知識、三顧の礼、ティタニアの僧侶などを少量追加する。魔力の墓所、太陽の指輪、ジョラーガの樹語りを使っていると、2マナのカードはちょうど消費しやすい。個人的にはアーティファクトならば秘儀の印鑑>友なる石=タリスマン>印鑑で優先するべきと思う。1マナで動けるカードが沢山あるはずだから。

さらに重いカードを使う場合、スランの発電機、木霊の手の内などを考慮することになる。1枚で複数のマナが出るのでカードアドバンテージも取れたりするのだが、一方でこれらは他のマナ加速がないと使用タイミングがない。使うころにはゲームを決めるコンボの打ち合いになっていることもあり、迂闊にフルタップで出せない。また、例えばシッセイの指輪のような微妙なカードを使うくらいなら、トレイリア西部や加工を採用して魔力の墓所や太陽の指輪につなぎやすくするというのも手。EDHではマナ関連でデッキの半分以上を占めることが多いので、純粋なマナ加速だけだと後半のマナフラッドが避けられない。特に重いマナ加速を使うということはロングゲームを見据えているわけで、後半にドローカードを使って土地とマナ加速ばかりということは避けたい。

純粋なマナ加速という話からはそれるが、1マナ以下のマナ加速の多くは中盤から後半には要らなくなる。これを有効活用するには幾つかの方法がある。

①新生化、異界の進化、自然の秩序でマナクリをコンボパーツに変える。タッサの神託者、呪文探究者(デモコン)、クウィリーオン・レインジャーなど。
②暗黒の儀式やモックスなどは、むかつき、深淵への覗き込み、ボーラスの城塞からの大量ドロー後に更にマナを増やす手段に。

この辺りはメジャーな再利用方法で、多くの強いと言われるデッキに採用されるコンセプト。これを見ると緑と黒にしか利点がないようにも見えるが、ジェネラルが都合よく消費してくれる場合もあって、

・最高工匠卿、ウルザ
金属モックスは刻印なしで、睡蓮の花びらは生贄にせずマナ源にでき、余ったマナで能力起動。0マナアーティファクトファクトは潮吹きの暴君のコンボに貢献。
・ウェザーライトの艦長、ジョイラ
金属モックス(刻印なし)でもドローできる。軽いものは撤収、逆説的な結果などで再利用しやすいカードにもなる。
・無限のエルシャ
デッキトップが土地ではない軽いカードだと回転率が上がる。モックス・ダイアモンドで追加コストを支払えなくてもデッキを掘り進められる

こういった具合。大量のマナ加速で初速を上げ、過剰なマナ加速を何らかの形で還元できる構築が理想的である。使用頻度は低いが、適者生存でマナクリをコストにするとか、使い終わった魔力の櫃をTransmute Artifactのコストにしてコンボに繋げるというものでも、勿論よい。



4.妨害カード

妨害カードに関しても、結論から言えば「出来れば0マナ、最低でも1マナ程度のインスタント」が推奨される。ちなみに優先度が高いのは、打ち消しとクリーチャー除去。

1:1の対戦では、カウンターを構えた状態で、相手が致死的ではないそれなりの脅威のスペルを使ったとして、それを打ち消してもテンポロスがないため容認される。完全な構え損にはなりにくい。

EDHでは異なる。

カウンターを構えて、相手が三人とも大した行動をしなかった場合に困る。自分だけ展開が遅れてしまう。かといって直前のターンの対戦相手に妨害を当てても、自分とそのプレイヤーが損をして、他の二人が得をする。

理想的には妨害のためにマナは構えない方が良いのである。

そのため少々リスクがあったり、使いにくさがあっても0マナのカードは価値が上がる。

意志の力は相変わらずEDHでも最強クラスの妨害カードだと思っているし、上述の通り1マナ加速には緑が有能なので水没も条件を満たしやすくて使いやすい除去カード。殺しはしばしば致命的な統率者(ズアーやギトラグの怪物)を倒せない欠点があげられるが、オープンリーチは誰かが対処してくれると割り切って、0マナ除去を構えることを優先したほうが強いと考えている。相手の妨害は第一優先ではない。できれば妨害カードは使わない方が良いのである。

じゃあ、妨害カードを入れなくても良いかというと、それも違う。

むかつきやタッサの神託者はカウンターでないと対処困難。3番目4番目という遅い手番になった時に、速度で上回るのは無理なので、軽い妨害(例えば狼狽の嵐)でテンポをとって巻き返すしかない。よく初心者向け解説では打ち消し呪文は使った側と使われる側が損をするから弱いと言われるが、強いか弱いかは関係なく勝つためには必要。打ち消しじゃないと対処が難しいコンボが幅を利かせており、逆に相手も同じようにカウンターを使ってくるのでカウンター合戦をしないといけない場面は必ず出てくる。コンボを通すだけなら夏の帳も強いカードだが、相手の妨害には使えないので汎用性に劣る。ちなみに沈黙は、自分のコンボを通す手段だけでなく、相手のむかつきに対応して打つことで即死を免れるし、条件付きで相手のコンボを失敗させられるので有能なカードだと思う。

また、最近では敵対工作員や船殻破りという展開を阻害するカードがはびこっており、そうでなくても統率者というシステム上、クリーチャー除去は腐る頻度が少ない。自分の勝ちを押さえつけている妨害カードを処理できないと勝てないので、ある程度、除去カードにもスロットを割く必要がある。エンチャントやアーティファクト割りは少し価値が落ちるが、全くないと詰みを回避できなくなる。例えば蒸気の連鎖を使えば、かなり広範に保険を掛けられるし、サイクロン裂け目はどんなに複雑なボードになっていてもひっくり返すチャンスを残せる(実際に蒸気の連鎖やサイクロンの裂け目はサーチカードから持ってきたい場面が、しばしば存在する)。

インスタントであることが大事である理由は、例えば以下のような状況で説明できる。

自分→対戦相手A→対戦相手B→自分とターンが進行する場合を考える(分かりやすく3人対戦)

対戦相手B:ズアーを場に出す。
ここで自分が剣を鋤にを持っていても、対戦相手Aのターンエンドまで待つ。
もしも対戦相手Aがソーサリーの除去しか持っていなければ、自分は剣を鋤にを温存できる(=相対的にアドがとれる)。

ついでに、このケースをもう少し掘り下げてみようと思う。

対戦相手B:ズアーを場に出す。
自分:剣を鋤にを持っているが、温存して溢れかえる岸辺を立ててエンド。
対戦相手A:フルタップして統率者を展開してエンド。ズアーは生き残った!

これはヤバイ状況である。ズアーのターンになって土地がアンタップされると自分の除去をカウンターで守られてしまうかもしれないので、慌てて対戦相手Aのエンド時に剣を鋤にを使ってズアーを処理した。

しかし、対戦相手Aは手札に致命的なはしゃぎまわりを持っていたのであった…

対戦相手Aの思考としては、勿論妨害よりも自分の展開を優先したい。露骨に1マナ構えている自分の行動をみて、妨害カードを持っていると踏んで、あえてエンドを選択。最悪何もなかったとしてもズアーのアップキープに除去を打つという選択肢がないわけでもない…が、さらに大事な要素もはらんでいて、自分が溢れかえる岸辺を立てているせいで、対戦相手Aは終了ステップで一旦優先権をパスして、他のプレイヤーが何もしなかったことを見てから、「実は除去を持っているから再度優先権を得るためにフェッチを切って」と言えてしまう。

この場合の悪手はフェッチランドを不用意に立ててエンドしてしまったことと。そもそも0マナ除去を持っていた対戦相手Aの方が、構築の時点で駆け引きが有利になるのは必然だった。


0マナのインスタントを推したいが、例外的に強いカードもいくつかある。その代表格は金粉のドレイク。

通常除去は自分と相手が損をするカードだが、金粉のドレイクは、たった2マナで相手の脅威を処理しつつ自分のもとに有能生物が来る使い損になりにくい。3/3飛行は他のフォーマットでは強いかもしれないが、EDHでは勝てるほどのサイズではないし、対戦相手の場をがら空きにしない点も実はメリットである。除去してブロッカーがいないプレイヤーがいると、ティムナ、ナジーラ、エドリック、百合子のようなジェネラルのカモにされる。

余談だが、金粉のドレイクに関するルールはしばしば揉めるのでおさらい。

金粉のドレイクの能力は「交換」なのでドレイクの能力に対応してドレイクを除去すれば、交換を阻止できる(701.10a)。

また通常ゲームから離れたプレイヤーのコントロールするパーマネントは全て追放されるが、コントロールが変更されたパーマネントの場合、直前のコントローラーに戻る(800.4c)。すなわち、プレイヤーAが金粉のドレイクを使用して、プレイヤーBの結界師、ズアーとコントロールを交換している状態で、プレイヤーAが敗北するとズアーは追放されずにプレイヤーBのコントロール下に戻る。

ちなみに袖の下のように直接奪うカード(コントロール変更ではない効果)の場合は、奪ったプレイヤーが敗北するとそのまま追放される。


最低限の軽量除去以外に、デッキによって毒の濁流や思考の評決などのリセットを使うことは容認されるだろう。僕は滅びのような全除去も、ピン除去もどちらも使うが、例えばピン除去ならば構える重さを嫌って汎用的な暗殺者の戦利品すら抜いているデッキもある。軽いということはとにかく大事であることを強調したい。



5.ドローカード

最初に、色が合うのならばMystic Remoraとリスティックの研究は使用した方が良い。賛否両論あるらしいが、まずは使用感を知るべき。ちなみに僕は必ずどこかで機能する場面が出てくるので色が合えば採用派。

例えばむかつきデッキは対戦相手にこれを置かれた状態で仕掛けるのは相当なリスクになる。むかつきで沢山の0-1マナ加速をめくってそこからコンボに繋げるにあたって、数枚引かれてしまう。万が一相手がピッチスペルなどかき集めてしまったら、コンボを防がれた上に返しのターンで負けてしまう。これらのカードはカードアドバンテージを求めるだけでなく、一人で大量のスペルを唱えるソリティアへの抑止力になる。抑止力で言えば、エーテル宣誓会の法学者などでも良いわけだが、リスティックの研究は機能したときに自分の勝利に直結する。

リスティックの研究は基本的にはマナを支払うのが正解なのだが、構えている妨害カードの分まで余分にマナを残すことは難しい。リスティックの研究が置かれている状況で、うかつに誰かがコンボを仕掛けて妨害合戦が発生すると、一気に4-5枚カードが手に入る。待っていれば、いずれそのチャンスが来る。すぐに引けないから弱いではなく、EDHの基本的なゲームの流れから、置いておくだけで効果が約束されているようなもの。

時折、リスティックの研究を抵抗の宝球と表現されるが、僕は異なると思う。リスティックの研究は展開の遅れたプレイヤーの行動を阻害しない。すなわち

・対戦相手Aがロケットスタートして沢山マナを伸ばした
・自分はほどほどに展開してリスティックの研究を置いた

この時に、展開で遅れたプレイヤーの最善手は、対戦相手Aに一人勝ちさせないように、リスティックの研究不払いで、上位二人を戦わせること。そこで妨害を消耗させつつ、マナ差を詰める。一番勝利に近い対戦相手Aからすると、まるで1:2のような構図になる。

これが抵抗の宝球だと、展開に出遅れたプレイヤーの勝ちをつぶし、“自分”が全部止めないといけなくなる。

また、リスティックの研究はマナがない状態で意志の力を使うことが出来る。抵抗の宝球は出来ない。冒頭の血染めの月のケースのように、中途半端に対戦相手の行動を抑制することは、別のプレイヤーのコンボを止めてもらえるチャンスを失う。リスティックの研究は、そのほどほど具合がとても良い。魔力の墓所から1ターン目リスティックの研究は、EDHでの最強行動だと思っているし、2ターン目にリスティックの研究設置も十分強い。


同じような理由で、Mystic Remoraも良い。こちらは維持コストがあるため扱い方が難しい。1ターン目にフルタップで出すと、以降は維持にマナを吸われて展開できなくなる。かといって2ターン目に出すと相手のモックスなどは展開済みで大して引けなくなるかもしれない。Mystic Remoraは上記のリスティックの研究のように、なるべく維持したほうが良い。状況によるとはいえ、累加アップキープ3くらいまでは十分支払うし、それ以上払うこともある。理想的には0マナ加速を絡めて1ターン目に設置できること。これなら次のターン以降も維持と展開を両立できる。1ターン目フルタップで出すかどうかについては、経験を積んで選択するしかない。


その他のドローソース(カードアドバンテージを得る手段)については、デッキコンセプトによる。何らかのコンボ特化であればドローに割く枠はない。しかし特化デッキというのは実戦で戦えるのはむかつきなど一部の限定的なデッキとなるので、多くのデッキはある程度の中~長期戦を想定してドローは使う必要がある。その場合、なるべく統率者に依存する方が良い。

マナ加速は重なって引いたときに爆発力を生むが、ドローは重複すると使えない(使わなくてよい)ものが増える。TimetwisterとWheel of Fortuneを同時にひいても意味がないし、自分が嘘か真かを使った後に、誰かにTimetwisterを使われると意味がない。一方でドローカードが少ないと、すぐに手詰まりになるので沢山いれたい…。

この要求を同時に満たしてくれるのは、統率者。

絶対に使える。再利用できる。そしてデッキの中にドローの枠をたくさん取らなくても良い。ただし、除去されてしまうものはダメ。ズアーからネクロポーテンスを狙うのは、欲張りすぎで成就できない。タイムラグがあるものは強すぎず弱すぎないもの、もしくは唱えた時点で効果を得られるなど即効性のあるものを使いたい。



6.統率者を生かした構築とは?

統率者は毎ゲーム必ず使えるので、デッキの中心に据えるのは合理的である。本来は2枚コンボになるものでも、統率者を絡めることでライブラリーから引くべきカードは実質1枚となって“1枚コンボ”が誕生する。しかし統率者は確実に唱えることが出来る反面、対策も厳しいものとなる。何せ、ゲーム開始時から見えているのだから、対戦相手は統率者を意識したプレイングを考える。即死しかねない統率者はすぐに処理されるし、有能な能力を持っていると金粉のドレイクで奪われる。その上で、どう考えればよいのか。まずは具体例を挙げる。

●妖精の女王、ウーナ

ウーナは無限マナが生成できれば、全員のライブラリーを追放して勝ちである。そのため無限マナコンボを投入するというのは合理的に思える。そこで、厳かなモノリス + Power Artifactを使おう!


…残念だが、これは、あまり望ましい構築ではない。

厳かなモノリス + Power Artifactにかかるコストは、2UU。
そこからウーナのキャスト、対戦相手のライブラリー3つを飛ばすことを考えるとU/Bの色マナが6つ必要。

非常に重い。

同じようにライブラリーの中から2枚集めるのであれば、タッサの神託者とDemonic Consultationで良くないか?モノリスは単品でマナ加速に使えるとはいえ、コンボが重くなりすぎてスピード勝負を捨てることになるし、除去が効きやすいというデメリットもあるので、総合的にはタッサの神託者の劣化を言わざるを得ないだろう。

統率者を生かすことに固執して、結果として弱い動きを組み込んでは本末転倒である。

実は統率者を絡めた多くの動きは、この問題を起こしがち。

カード1枚なら…
・むかつき(ただし特化するには構築制限がかかる)
・直観→死の国からの脱出、セヴィンの再利用、ライオンの瞳のダイアモンドなど

カード2枚なら…
・タッサの神託者とDemonic Consultation
・生き埋めと再活性(壊死のウーズ、歩行バリスタ、Phyrexian Devourer)
・納墓とネクロマンシー→変幻の大男

マナや妨害にしにくさまで含めると、これを上回るのはなかなか難しい。

統率者を使わないコンボがかなり強いので、現状トップの構築は、統率者をカードアドバンテージ源として利用してコンボのサポートをするものが多い。勿論、統率者をマナ加速として上記コンボのサポートに使っても良いが、この場合は実質ログラクフしかいない(上記のコンボとの色の兼ね合いで)。

それでも統率者を生かして差別化するには、基本的には統率者とカード1枚の組み合わせを追求することになる。以下に個人的に差別化できていると思われる例をいくつか挙げる。

●刃を咲かせる者、ナジーラ

条件付きではあるが、統率者+浄化の戦術家、デリーヴィーなどで1枚コンボになる。1枚コンボは、むかつきのように条件付きか直観のようにすごく重いという条件が付くが、ナジーラは直観より軽くて緩い条件から仕掛けることが出来る。

また統率者が軽いこともメリットで、激情の後見、偏向はたき、致命的なはしゃぎまわりという0マナ妨害カードを使いやすくなる。


●無限のエルシャ

エルシャが絡むコンボは、師範の占い独楽+コスト軽減カードの無限ドロー。
2枚も集めないといけないので一見するとタッサの神託者に劣るのだが、エルシャは独楽をサーチした段階で凄いスピードでライブラリーを掘り進めることが出来る(独楽のタップ能力でカードを引いた後、ライブラリーの一番上から独楽を唱えることで実質①で1ドロー)。またコスト軽減カードは、エーテリウムの彫刻家、覚醒の兜、鋳造所の検査官、雲の鍵など、たくさん種類がある。サーチするべきは実質独楽の1枚で、コンボパーツを集めやすい。これらの点から、純粋にライブラリーから2枚集めるのとは異なる利点がある。

このようにメジャーな戦術と比べた明確な利点をもって、はじめて差別化しているといえる。タッサの神託者は倦怠の宝珠が効くけど、自分のウーナのモノリスのコンボには効かないから…と重くて決定力の低いコンボを使っても、総合的に見て劣っていれば意味がないのである。重箱の隅をつつくような後付けの理由で言い訳しても、勝率は上がらない。



7.具体的な構築指針

・使いたい統率者から、相性の良いカードを選ぶ
・使いたいカードから、相性の良い統率者を選ぶ

これについては、どちらでも良いと思う。上述のようなマナ加速、ドロー、統率者をどれだけ生かすかを検討したのちに考えたいのは、具体的なゲームプラン。これも実際の例を挙げた方が分かりやすいだろう。


●野生の心、セルヴァラ

1ターン目 ラノワールのエルフなどの加速
2ターン目 統率者を場に出す
3ターン目 激励でセルヴァラのパワーを上げて、森林の怒声吠えをキャスト。クウィリーオン・レインジャーをサーチしてセルヴァラをアンタップして、リシュカーの巧技を唱える。引いた異界の進化からワイアウッドの共生虫を出してセルヴァラをアンタップして威厳の魔力を出してカードを引いて…

最後に暗黒のマントルで無限マナにして、歩行バリスタで勝ち。


これはとても分かりやすいゲームプランである。このコンセプトを達成するためには、

・1ターン目のマナ加速
・セルヴァラのパワーを上げる手段(低コスト高パワー生物)
・アンタップする手段
・ドローする手段

これを“適正な枚数”使用すればよい。どれくらい必要なのかは、実際に調整して決めていくわけだが…

このゲームプランには致命的な欠陥がある。①自分より早いコンボがいたらどうするのか。②セルヴァラが除去された場合どうするのか

まず①自分より早いコンボについては、「諦める」で良い。緑なので汎用的な対処は無理。

しかし細かいところで言えば、妨害の矛先がなるべく自分に向かないようにすることで、間接的に対処できる。自分のセルヴァラよりも相手のログラクフを除去してよ、ということなのだが、これは自分の知識やプレイングで何とかなるものではなく、対戦相手の知識やプレイングに依存する。対戦相手がログラクフを出した返しでセルヴァラを出すと、多くの場合はセルヴァラに除去の矛先が向いてログラクフが勝ってしまうので、キャストタイミングを考えるというのは一つだが…。

②セルヴァラが除去された場合。これは現実的には頻発することで、重大な要素。すなわち、上記の想定した通りのゲーム進行よりも除去されることの方が多い。妨害が入ることを考察外には出来ない。先のログラクフの例も合わせると、

2ターン目にセルヴァラを出さない

この選択肢を作ることが大事。

例えば、稲妻のすね当てを先に置いておく、3マナくらいで展開に貢献する生物(出来れば高パワー)を展開してから後からセルヴァラを置くなど。相手の妨害を一手に受けそうな場合には、むら気な長剣歯、数多の声などで展開して土地を並べてからセルヴァラに繋げてもいい。狩猟の統率者、スーラクは先においておけばセルヴァラへの速攻と高パワーを一気に満たせるし、先にワイアウッドの共生虫とウッド・エルフをサーチして、相手の様子を伺いながら土地を伸ばしても良い。生物が並ぶことは後の威厳の魔力やガイアの揺籃の地に貢献するので無駄ではない。妨害が豊富な卓では、早いコンボはどうせ通らないので、①自分より早いコンボ問題も勝手に解決される。どういう統率者に囲まれて、どういう状況で妨害が頻発するのかは環境にもよるし、経験も大事なので実戦を重ねるしかない。

ここで大事なのは、上手くいったときのゲームプランだけを考えても意味がないこと。特に妨害が入った後や妨害が入りそうな時にどうやってゲームを進めるのか具体的に考えることが大事。

初級者にありがちな不十分なゲームプランとしては、

・〇〇と××のコンボを狙う
・これが失敗したときには時のらせんで手札を回復してもう一度仕掛けます!

これは、むしろ都合よく進んだパターンである。コンボを妨害されてリソースを失ったうえで、更に理想的な動きを組むことは到底できない。自分だけ他の対戦相手よりも手札とマナが沢山ある前提かな?100枚ハイランダー構築で、最初に仕掛けるカードとリカバリーのためのカードを都合よく引き分けることが出来るかな?

普通はコンボが失敗した時点で、虚無である。コンボに特化すればするほど、リカバリーは効かなくなる。逆にリカバリー手段を増やすと、初手にたまって初動が遅れる。EDHでは勝利の直前の瞬間は1:3になって妨害カードの集中砲火を浴びて、相対的にかなりディスアドになってしまうのは冒頭で話した通り。更には自分がコンボにいそしんでいる間に、マナ加速や展開を重視したプレイヤーが必ずいるはずで、時のらせんで手札差を無くしても、結局展開差を縮めることはできないし、時のらせんで手札とマナを回復してそのまま仕掛けるのは更に悪い。対戦相手3人が7枚ずつカードを引いているので、高い確率で妨害の集中砲火を浴びる。すなわち、時のらせんで手札を戻しても、結局はすぐに仕掛けずにタイミングをうかがう必要性が出てくる。

コンボを使わずに無為にターンを過ごしても仕方ないし、大抵の場合は土地が詰まって、手札に中途半端なコンボパーツが集まって身動きが取れなくなる。そのため、コンボを仕掛けずに様子を見るサブプランの用意こそが課題。

先ほどのセルヴァラの例で言えば、3KILL率が上がるカードを詰め込みたくなるのだが、それをするほどに手札は“うまく回った時にしか使えないアンタップやコンボ専用カード”などで溢れかえる。少々平均速度を落としてでも、サブプランを充実させたい。しかしスピードを落としすぎても問題で、自分が1番手を取った時など速度で押し切れそうなゲームを決めきれなくなる。このバランスは要調整となる。

もしも、すべてをコンボに特化して速度勝負をしたいのなら、むかつきを使った方が良い。ターンを返す必要がないし、引きが強い時のキルターンは相当早いので、速度だけで誤魔化して取れるゲームは、沢山ある。細かい対処方法がいろいろ違うとはいえ、速度勝負するデッキで“召喚酔いがある”とか“統率者のキャストが必須”というのは総合的に見て劣化要素でしかないと思う。その分、別の利点を追求するべきである。


●トラシオス&ティムナ

これの具体的な指針については、敵対工作員&船殻破りが登場する前にまとまった内容を過去に書いていたので、リンクを張るのみで割愛する。

https://wwwwwwwwwwwwwwwww.diarynote.jp/202010261940073153/



続く

コメント

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索