EDH デッキの分類とウルザについて脳内考察
2021年9月26日 Magic: The Gatheringウルザを自身で使ったことは無いが、相見えたことは何度もあるし、対戦動画や色んな人のレシピを見た上で、考えたことを書いてみる。
まずEDHのデッキ特性について考えたい。
良くある(?)EDHのデッキの分け方にこんなものがある。
・高速コンボ(主に黒、むかつき)
・スタックス
・ミッドレンジ
例えばトラシオス&ティムナはミッドレンジに相当する、というもの。
しかし、僕はこの分け方には反対である。厳密には、デッキ=構築をこの三つに分類することは無意味で、戦術について考察する上では大事だと考える。トラシオス&ティムナを挙げて、具体例を出す。
トラティムは基本的には統率者による地味なカードアドバンテージを稼ぎながら、妨害カードを適宜使用して中~長期戦を狙うので、まさにこういうデッキをミッドレンジと言うわけだが…
例えば、こんな初手があったらどうだろう。
Underground Sea
統率の塔
極楽鳥
タッサの神託者
Demonic Consultation
否定の契約
精神的つまづき
こんな初手が回ってきたら、“ミッドレンジ”と言われがちなトラティムでも勿論2KILLを狙う。動きとしては高速コンボだ。
これは出来過ぎた手札なのだが、マナクリ、異界の進化+吸血の教示者など、3ターン目に仕掛けるプランは結構ある。手番や対戦相手の動き次第では十分高速コンボと言える。
またトラティムは、しばしばドラニスの判事、溜め込み屋のアウフで相手の行動を縛り、その間にティムナでアドを稼ぎ続けるという動きがある。人によっては敵対工作員、リンヴァーラなどで更に締め付ける。これはスタックスと呼ぶのではなかろうか。
つまり、デッキのカテゴリとして挙げられた三つの要素、
・高速コンボ
・スタックス
・ミッドレンジ
これら全てをトラティムは戦術として持ち合わせている。さらに明確に分けられる戦い方をするわけではなく、実戦では混合した戦いをすることも考えられる。引きや対戦相手の出方によって臨機応変に変わる。
別のデッキで言えば、ログラクフ&テヴェシュは基本的には高速コンボを狙うわけだが、コンボの通る見込みがない場合ではピン除去やチューター経由のリセットでテヴェシュを守って手札を整えるし(=ミッドレンジやコントロールのような動き)、願い爪のタリスマンで敵対工作員を持ってきて(持ってきたカードを見せなくても3マナ立て続けることで警戒されて)、場を膠着させることもあるだろう。ログテヴェも複数の要素を持ち合わせている。
だからと言ってトラティムとログテヴェは三つの要素を組み込んだ同じデッキという風には分類されない。それぞれの比重が違う。トラティムの高速コンボは限定的だが、ログテヴェは一番期待される動きとなる。
最も期待される戦術を代表して、そのデッキ自体をカテゴライズするという意見もあろうが、おそらく多分デッキを分類している人達には複数の戦術を持ち合わせているという認識はない。
そして、代表的な戦術をとりあげてデッキを分類するということも、僕は否定的である。分類することが目的ではなく、分類して考察を進めることに意義がある。無理矢理わけても、話が進まない。
トラティムやログテヴェがある程度柔軟に戦術をスイッチできるのは、以下の二つの要素が大きい。
①黒のチューター
②噛み合わない手札を誤魔化せる統率者によるドロー
これが無いデッキに欲張って詰め込むと破綻する。
例えば、高速コンボ狙いの緑セルヴァラは、コンボ以外に大した動きが出来ない。統率者自体が構築に大きく制限をかけていることもあるし、生物サーチしか出来ない緑単では柔軟な動きには限界があるなど、色んな理由から突っ込むしか無いデッキになる。このデッキはほぼ高速コンボの要素だけで構成される。行動の幅が違いすぎて、セルヴァラとログラクフを同じように高速コンボと分けても、あまり次の議論に繋がらなさそうだ。
ログラクフ&テヴェシュは高速コンボ主体で有りながら、グラデーションのようにコントロール要素や多少のスタックス要素を持っている。
セルヴァラは高速コンボしか出来ず、豊富な生物サーチから溜め込み屋のアウフはあるものの、これは自分の最速コンボを1ターン遅らせるのでグラデーションというよりは完全に仕分けられた動きになる。格闘持ちのファッティで頑張ってリンヴァーラを落とすというのは、メインの動きからは完全に外れてしまう。
僕はデッキを分類するにあたって、
①黒の有無
②統率者がリソース獲得手段かどうか
③妨害を浴びやすいか
④デッキは総じて軽いか
この辺りを軸にデッキを分けた方が、実際に戦えるかどうか、勝てるかどうかを考える上では有用ではないかと思う。ちなみに主に統率者軸の高速コンボは速度で誤魔化せる面もあると思うが、黒がないと基本的には1ターン回さないといけないので、あえて項目に含める必要はないと判断した。
何なら点数付けしても良いと思うし、その方がパワーレベルという主観的で意味不明な分類よりも有用な気がするが、点数自体の検証をしないといけない。本来は点数の重みを考える上では、過去の戦績データから個々の要素のオッズ比を出すべきなのだろうが、経験的に感覚的につけてもそう外れない気がする。まあ、また別の機会に。
さて、大分前置きが長くなったが、ウルザはどうか。
まず上述の三つの戦術に分解して考えると
★高速コンボ
無し。
宝石の睡蓮などでウルザの高速キャストを実現しても、チューターが弱い、コンボが重いため2KILL狙いは現実的ではない。
★スタックス
冬の宝珠、生態の宝珠は他のデッキには真似できない固有の動き。豊富なアーティファクトサーチに対応しているのも高評価。しかし、1-2ターン目の牽制には使えず、ある程度ゲームが長引いてから真価を発揮する。
★ミッドレンジ
ウルザは溜め込み屋のアウフに耐性があるので、他のアーティファクトデッキと違って、中~長期戦を仕掛けても虚無になりにくい。
またトークンが壁として偉大で、ウルザ自身を除去されても殴られにくい点は長期戦に向いている。
一方でリソースの増やし方が弱い。
ウルザの5マナの能力は基本的には「カードを1枚引く」よりも弱い。デッキに3割くらい含まれる土地があるので自分のターンで起動しないと空振りになるし、軽量アーティファクトとインスタントの妨害も合わせると、得をする場面が少ない。
総じて、勝つためにも、負けないようにするためにも概ね3ターン目以降まで長引かせる必要があるが、長期戦になったからといって、有利と言えるほどのリソース獲得能力があるわけではない。
こうやって書くと弱いな…
実際、ウルザと対面して思うのは、派手に展開するけれども手札切れで虚無ってる、というゲームが多い。
ウルザの能力はマナを生成するけど、自身で生み出せるのは青1マナだけで、他のカードと組み合わせないとマナが出ない。ウルザは単品で沢山マナを生み出す統率者と違って、デッキ内にドローを固めることは出来ない。
中途半端なんだよね。
デッキ内に
・マナ加速
・ドロー
・ウルザの利点を生かす軽量アーティファクト
を積む必要があって、さらにコンボや妨害にも枠が必要。黒がないのでチューターで戦術をスイッチ出来ないし、チグハグな手札が来たら、マナを伸ばして5マナ能力を使って(どうせ大した成果はなくて)、死んでいくしかない。
キナンも同じような弱点を持つと思うが、せっかく統率者という安定した動きを保証する要素があるのに、結局はデッキ内のカードを都合良く引き分けないといけない。ウルザという統率者がいるからといって、マナ加速、ドロー、コンボ、妨害という基本パーツのいずれかをデッキの中から減らせるわけではない。トラシオス&ティムナはドローを減らせるし、ログラクフ&テヴェシュはよりマナ加速に寄せることが出来るというのに…
・黒がない
・統率者はリソース獲得手段として弱い
・無視されない派手な展開をする
強いところがない。
いや、正確には「デッキは総じて軽い」というところだけは該当するが…
色んなところで「ウルザは強い」と言われることが多いが、僕はウルザはあまり強くないと思っている。理由は上記の通り。一応補足すると弱くも無いと思う。多少のリソース獲得能力とデッキの軽さから。
そして、色んな人にデッキの本来の力以上に強いと思われることは「より無視されにくい」ということになってしまうので、更にデッキとして弱くなる。
うーん。
何となく青茶をくみたいと思い、分かりやすいウルザに目を向けてみたが、イマイチな感じが拭えない。
まずEDHのデッキ特性について考えたい。
良くある(?)EDHのデッキの分け方にこんなものがある。
・高速コンボ(主に黒、むかつき)
・スタックス
・ミッドレンジ
例えばトラシオス&ティムナはミッドレンジに相当する、というもの。
しかし、僕はこの分け方には反対である。厳密には、デッキ=構築をこの三つに分類することは無意味で、戦術について考察する上では大事だと考える。トラシオス&ティムナを挙げて、具体例を出す。
トラティムは基本的には統率者による地味なカードアドバンテージを稼ぎながら、妨害カードを適宜使用して中~長期戦を狙うので、まさにこういうデッキをミッドレンジと言うわけだが…
例えば、こんな初手があったらどうだろう。
Underground Sea
統率の塔
極楽鳥
タッサの神託者
Demonic Consultation
否定の契約
精神的つまづき
こんな初手が回ってきたら、“ミッドレンジ”と言われがちなトラティムでも勿論2KILLを狙う。動きとしては高速コンボだ。
これは出来過ぎた手札なのだが、マナクリ、異界の進化+吸血の教示者など、3ターン目に仕掛けるプランは結構ある。手番や対戦相手の動き次第では十分高速コンボと言える。
またトラティムは、しばしばドラニスの判事、溜め込み屋のアウフで相手の行動を縛り、その間にティムナでアドを稼ぎ続けるという動きがある。人によっては敵対工作員、リンヴァーラなどで更に締め付ける。これはスタックスと呼ぶのではなかろうか。
つまり、デッキのカテゴリとして挙げられた三つの要素、
・高速コンボ
・スタックス
・ミッドレンジ
これら全てをトラティムは戦術として持ち合わせている。さらに明確に分けられる戦い方をするわけではなく、実戦では混合した戦いをすることも考えられる。引きや対戦相手の出方によって臨機応変に変わる。
別のデッキで言えば、ログラクフ&テヴェシュは基本的には高速コンボを狙うわけだが、コンボの通る見込みがない場合ではピン除去やチューター経由のリセットでテヴェシュを守って手札を整えるし(=ミッドレンジやコントロールのような動き)、願い爪のタリスマンで敵対工作員を持ってきて(持ってきたカードを見せなくても3マナ立て続けることで警戒されて)、場を膠着させることもあるだろう。ログテヴェも複数の要素を持ち合わせている。
だからと言ってトラティムとログテヴェは三つの要素を組み込んだ同じデッキという風には分類されない。それぞれの比重が違う。トラティムの高速コンボは限定的だが、ログテヴェは一番期待される動きとなる。
最も期待される戦術を代表して、そのデッキ自体をカテゴライズするという意見もあろうが、おそらく多分デッキを分類している人達には複数の戦術を持ち合わせているという認識はない。
そして、代表的な戦術をとりあげてデッキを分類するということも、僕は否定的である。分類することが目的ではなく、分類して考察を進めることに意義がある。無理矢理わけても、話が進まない。
トラティムやログテヴェがある程度柔軟に戦術をスイッチできるのは、以下の二つの要素が大きい。
①黒のチューター
②噛み合わない手札を誤魔化せる統率者によるドロー
これが無いデッキに欲張って詰め込むと破綻する。
例えば、高速コンボ狙いの緑セルヴァラは、コンボ以外に大した動きが出来ない。統率者自体が構築に大きく制限をかけていることもあるし、生物サーチしか出来ない緑単では柔軟な動きには限界があるなど、色んな理由から突っ込むしか無いデッキになる。このデッキはほぼ高速コンボの要素だけで構成される。行動の幅が違いすぎて、セルヴァラとログラクフを同じように高速コンボと分けても、あまり次の議論に繋がらなさそうだ。
ログラクフ&テヴェシュは高速コンボ主体で有りながら、グラデーションのようにコントロール要素や多少のスタックス要素を持っている。
セルヴァラは高速コンボしか出来ず、豊富な生物サーチから溜め込み屋のアウフはあるものの、これは自分の最速コンボを1ターン遅らせるのでグラデーションというよりは完全に仕分けられた動きになる。格闘持ちのファッティで頑張ってリンヴァーラを落とすというのは、メインの動きからは完全に外れてしまう。
僕はデッキを分類するにあたって、
①黒の有無
②統率者がリソース獲得手段かどうか
③妨害を浴びやすいか
④デッキは総じて軽いか
この辺りを軸にデッキを分けた方が、実際に戦えるかどうか、勝てるかどうかを考える上では有用ではないかと思う。ちなみに主に統率者軸の高速コンボは速度で誤魔化せる面もあると思うが、黒がないと基本的には1ターン回さないといけないので、あえて項目に含める必要はないと判断した。
何なら点数付けしても良いと思うし、その方がパワーレベルという主観的で意味不明な分類よりも有用な気がするが、点数自体の検証をしないといけない。本来は点数の重みを考える上では、過去の戦績データから個々の要素のオッズ比を出すべきなのだろうが、経験的に感覚的につけてもそう外れない気がする。まあ、また別の機会に。
さて、大分前置きが長くなったが、ウルザはどうか。
まず上述の三つの戦術に分解して考えると
★高速コンボ
無し。
宝石の睡蓮などでウルザの高速キャストを実現しても、チューターが弱い、コンボが重いため2KILL狙いは現実的ではない。
★スタックス
冬の宝珠、生態の宝珠は他のデッキには真似できない固有の動き。豊富なアーティファクトサーチに対応しているのも高評価。しかし、1-2ターン目の牽制には使えず、ある程度ゲームが長引いてから真価を発揮する。
★ミッドレンジ
ウルザは溜め込み屋のアウフに耐性があるので、他のアーティファクトデッキと違って、中~長期戦を仕掛けても虚無になりにくい。
またトークンが壁として偉大で、ウルザ自身を除去されても殴られにくい点は長期戦に向いている。
一方でリソースの増やし方が弱い。
ウルザの5マナの能力は基本的には「カードを1枚引く」よりも弱い。デッキに3割くらい含まれる土地があるので自分のターンで起動しないと空振りになるし、軽量アーティファクトとインスタントの妨害も合わせると、得をする場面が少ない。
総じて、勝つためにも、負けないようにするためにも概ね3ターン目以降まで長引かせる必要があるが、長期戦になったからといって、有利と言えるほどのリソース獲得能力があるわけではない。
こうやって書くと弱いな…
実際、ウルザと対面して思うのは、派手に展開するけれども手札切れで虚無ってる、というゲームが多い。
ウルザの能力はマナを生成するけど、自身で生み出せるのは青1マナだけで、他のカードと組み合わせないとマナが出ない。ウルザは単品で沢山マナを生み出す統率者と違って、デッキ内にドローを固めることは出来ない。
中途半端なんだよね。
デッキ内に
・マナ加速
・ドロー
・ウルザの利点を生かす軽量アーティファクト
を積む必要があって、さらにコンボや妨害にも枠が必要。黒がないのでチューターで戦術をスイッチ出来ないし、チグハグな手札が来たら、マナを伸ばして5マナ能力を使って(どうせ大した成果はなくて)、死んでいくしかない。
キナンも同じような弱点を持つと思うが、せっかく統率者という安定した動きを保証する要素があるのに、結局はデッキ内のカードを都合良く引き分けないといけない。ウルザという統率者がいるからといって、マナ加速、ドロー、コンボ、妨害という基本パーツのいずれかをデッキの中から減らせるわけではない。トラシオス&ティムナはドローを減らせるし、ログラクフ&テヴェシュはよりマナ加速に寄せることが出来るというのに…
・黒がない
・統率者はリソース獲得手段として弱い
・無視されない派手な展開をする
強いところがない。
いや、正確には「デッキは総じて軽い」というところだけは該当するが…
色んなところで「ウルザは強い」と言われることが多いが、僕はウルザはあまり強くないと思っている。理由は上記の通り。一応補足すると弱くも無いと思う。多少のリソース獲得能力とデッキの軽さから。
そして、色んな人にデッキの本来の力以上に強いと思われることは「より無視されにくい」ということになってしまうので、更にデッキとして弱くなる。
うーん。
何となく青茶をくみたいと思い、分かりやすいウルザに目を向けてみたが、イマイチな感じが拭えない。
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